新着情報

NEWS

Weekly Collection Report 2026.2.9~ 仕立ての覚書|ベロアという素材について

Netflix映画『10DANCE』配信開始

ボールルームの“帝王”杉木信也の衣装を製作させていただきました

 

2025年12月18日、Netflix映画『10DANCE』が配信開始となりました。
原作は井上佐藤先生による人気漫画『10DANCE』(講談社「ヤングマガジン」連載)。

この特別な作品で、ダンスコスチュームハセベは
ボールルームの“帝王”杉木信也役・町田啓太さんの衣装製作を担当させていただきました。

詳細はこちらのNetflix『10DANCE』町田啓太さん衣装製作のお知らせ

 

Dance Costume HASEBE

~Weekly Collection Report~

 

2026.2.9~

 

*New Tail Suit(velour)

素材:ベロア(上着)、ポリエステルNo.3(パンツ)

福島県よりお越しくださったお客様の燕尾服納品でした。

こちらは上着はベロア、パンツはポリエステルでお仕立てさせていただいております。

濃淡の差が非常にわかりやすい一着です。

ベロア生地に関しては後程記述させていただきますので、もしよろしければ最後までご一読いただけますと幸いです。

福島県より誠にありがとうございます。

 

 

 

*New Tail Suit(polyester)

素材:ポリエステルNo.3

北海道大学の学連ダンサー様の燕尾服納品です。

こちらは定番のポリエステルでお仕立てしており、安定の仕上がりです。

ご着用される本人様が細身なのに対し、トルソーがしっかりとしているので、前が閉まっておりません。

ご本人が着てくださるとしっかりフィットした燕尾服となります。

北海道から本当にありがとうございました。

 

 

*New  Latin Costume

ラテンシャツ素材:白光沢2way、白サテン

ラテンパンツ素材:ポリエステルNo.3(ウエスマンサテン)

燕尾服も弊社でオーダーしてくださった10ダンサー様のラテン衣装になります。

ラテンシャツのベースは光沢と張りのあるしっかりとしたよく伸びるレオタード生地で、耐久性にも優れております。

前身頃に施したのはサテンのプリーツです。

規則性で品のある衣装に仕立てられており、プリーツを重ねることにより、厚みと立体感の効果も付け加えてくれます。

ハイウエストのパンツは、ウエストの部分の素材を、シャツのプリーツと合わせたサテンにデザインしております。

パンツの裾を絞り、全体のメリハリを付けさせていただきました。

燕尾服もラテン衣装もハセベでオーダーしてくださって、本当にありがとうございます。

 

 

仕立ての覚書|ベロアという素材について

― 光と毛流れが生む、燕尾服の表情 ―

 

今週は「ベロア」についての覚書です。

燕尾服やラテン衣装において、ベロアは特別な存在です。

単なる黒ではなく、光を吸収して生まれる“深み”。

それがベロアの魅力です。

 

 

ベロアはただ「柔らかい生地」ではありません。

光の当たり方、毛流れの方向、そして裁断の取り方によって、まったく違う表情を見せる素材です。

今週はベロアを用いた燕尾服について、素材の特性という視点から整理してみます。

 

ベロアを使う理由

ベロアの最大の特徴は、光を受けたときの陰影です。

毛足があることで平面の黒ではなく、奥行きのある黒になります。

「圧倒的な漆黒」

舞台照明の下では動きに合わせて明暗が変わり、身体の立体感を強調します。

同じ黒でも、ウールやポリエステルとはまったく違う存在感になります。

素材そのものが演出の一部になる。

それがベロアの魅力です。

 

巡目(じゅんめ)と逆目(さかめ)

ベロアには毛流れがあります。

毛が自然に寝ている方向を巡目、毛を逆らう方向を逆目といいます。

巡目で裁つと光は煌びやかに流れ、華やかな表情になります。

逆目で裁つと毛足が立ち、色はより深く重く生地中最大の漆黒が見えます。

手で撫でると分かりやすいです。
滑らかに流れる方向が巡目、少し抵抗を感じる方向が逆目です。

同じ生地でも方向ひとつで印象が変わる。

なので裁断の段階でどの向きで使うかを決めておく必要があります。

左右で毛流れが揃っていなければ、色ムラのように見えてしまうため、ここは仕立ての重要な工程です。

 

ベロアのメリット

✔ 舞台照明で立体感が出る
✔ 写真に奥行きが生まれる
✔ 高級感が自然に伝わる
✔ シンプルな形でも存在感が出る

とくに燕尾服では、上着にのみベロアを使うことで重厚さと軽快さのバランスが取れます。

パンツまでベロアにすると重くなりすぎる。
よって素材の組み合わせが重要なのです。

 

扱いの難しさ

ベロアは美しい反面、扱いが繊細な素材でもあります。

縫製中に毛足が潰れないよう配慮し、プレスも通常の生地と同じ強さでしてしまうと毛足が潰れ、その部分だけ変に光ってしまうので、とても慎重に行う必要があります。

毛足が長いため、正確にピン止めして縫い合わせているはずでも、縫い目がどんどんずれていきます。

裁断方向を間違えると、完成後に色ムラと明らかなちぐはぐ感が出てしまう。

素材を理解していなければその良さは活かせません。

 

ハセベでの衣装によるベロアの目の使い分け

ハセベでは主に

  • スタンダード衣装:逆目(光を吸収し、深い漆黒が気品を引き立たせる役割)
  • ラテン衣装:主に巡目(稀に逆目も使用。デザインによって分けるが光を照らし毛の流れを美しく輝かせる役割)

と使い分けをしております。

 

まとめ

ベロアは装飾で華やかに見せる素材ではなく、光と質感で語る素材です。

巡目か逆目か。
どの部分に使うか。
全体のバランスをどう取るか。

その選択が燕尾服やラテン衣装の表情を決めます。

素材を選ぶことは印象を設計すること。

ベロアはそのことを改めて感じさせてくれる素材です。

 

 

以上、今週納品させていただきました衣装のご紹介と仕立てにまつわる覚え書きでした。

今後納品させていただいた衣装を中心に毎週新着ブログを更新していきます。

次週もどうぞご期待くださいませ。

 

2026.2.14