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Weekly Collection Report 2026.2.16~ 仕立ての覚書| 刺繍は構造であるという話

Netflix映画『10DANCE』配信開始

ボールルームの“帝王”杉木信也の衣装を製作させていただきました

 

2025年12月18日、Netflix映画『10DANCE』が配信開始となりました。
原作は井上佐藤先生による人気漫画『10DANCE』(講談社「ヤングマガジン」連載)。

この特別な作品で、ダンスコスチュームハセベは
ボールルームの“帝王”杉木信也役・町田啓太さんの衣装製作を担当させていただきました。

詳細はこちらのNetflix『10DANCE』町田啓太さん衣装製作のお知らせ

 

 

Dance Costume HASEBE

~Weekly Collection Report~

 

2026.2.16~

 

*New Morning Coat–Inspired Tailored Jacket

ジャケット素材:黒ベロア(逆目)、黒サテン、ゴールドモチーフ、ゴールドブレード

 

プロの先生のデモ用ジャケットとなります。

打ち合わせ段階では前身頃のカッティングを悩まれていたので、一番ベーシックな形で仮縫いを作製し、一度目のフィッティングで形をモーニング風に変えました。

お相手のお客様の衣装と併せ、ゴールドのモチーフとブレードをたっぷり使用し記憶に残る一着に仕上げていきました。

こちらの衣装は日本でのデモンストレーション、今年100周年を迎えるブラックプールでのデモンストレーションにもご着用いただけるとのことです。

格式高い、伝統の舞台での映え方も、とても楽しみな衣装です。

いつもオーダーのご依頼をありがとうございます。

 

 

仕立ての覚書| 刺繍は構造であるという話 

今週は、モチーフについての覚書です。

 

モチーフの意味

― 刺繍と構造、そして物語 ―

装飾はただ華やかにするためのものではありません。

刺繍やモチーフは、身体をどう見せるかを設計するための誘導線でもあります。

今週納品した黒のベロアジャケットは、ゴールドモチーフを中心に構成した一着。

そこに込めたのは

『Vertical Flow / Centered Power』

縦に貫く構造と、中心に宿る強さです。

 

映画の中の刺繍

映画『10DANCE』で印象的なのが、鈴木信也が着ているキューバのグアジャベーラの縦刺繍のシャツ。

整然と走る縦線は身体の軸を強調し、静かな意志を感じさせます。

刺繍は装飾でありながら、身体の構造を整える設計誘導線でもあります。

縦へ流すことで姿勢は強く、動きは軽やかに見えます。

あのシャツが放つ空気には線の力「Vertical Flow」があります。

 

Vertical Flow(縦に流れる構造)

今回のジャケットでも、胸元のゴールドモチーフ縦と袖のモチーフを縦方向へ構成しました。

視線は自然と中心へ落ち、身体の縦軸が強調されます。

踊りは縦の芸術。

首から丹田へ通る一本の軸が回転も静止も支えています。

装飾はその軸を可視化するための設計です。

 

Centered Power (中心に宿る強さ)

モチーフは左右対称で、中心に集約する構造。

力が外へ拡散するのではなく、内へ集まる印象を作ります。

ダンサーにとって重要なのは、センターの安定感。

その見えない強さを視覚的に示すのが「 Centered Power」 です。

 

素材が生む存在感

今回使用したのは黒スムースベロア。(逆目)

巡目と逆目では光の出方が変わります。(前回記事参照)

逆目は光を吸い込み、より深く、重厚な黒を生みます。

その上に浮かぶ立体的なゴールドモチーフ。

襟は黒サテンで切り替え、ベロアの陰影とのコントラストをつけました。

ブレードは輪郭を締め、構造を明確にするフレームの役割を担っています。

素材と誘導線が重なり、衣装としての存在感が完成します。

 

まとめ

刺繍は飾りの役割を担うだけではなく、身体を設計する誘導線となります。

Vertical Flow は縦の強さ。
Centered Power は中心の安定。

物語はそれぞれ違っても、身体をどう見せるかという思想は共通しています。

衣装は踊る人の軸と、覚悟を可視化するための構造でもあると私は考えます。

今回のジャケットもまた、その思想から生まれた一着です。

 

 

以上、今週納品させていただきました衣装のご紹介と仕立てにまつわる覚え書きでした。

今後納品させていただいた衣装を中心に毎週新着ブログを更新していきます。

次週もどうぞご期待くださいませ。

 

2026.2.22