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Weekly Pick out Collection Report 2026.3.23~ 仕立ての覚書|イカ胸シャツについて

Netflix映画『10DANCE』配信開始

ボールルームの“帝王”杉木信也の衣装を製作させていただきました

 

2025年12月18日、Netflix映画『10DANCE』が配信開始となりました。
原作は井上佐藤先生による人気漫画『10DANCE』(講談社「ヤングマガジン」連載)。

この特別な作品で、ダンスコスチュームハセベは
ボールルームの“帝王”杉木信也役・町田啓太さんの衣装製作を担当させていただきました。

詳細はこちらのNetflix『10DANCE』町田啓太さん衣装製作のお知らせ

 

 

Dance Costume HASEBE

~Weekly Collection Report(Pick out)~

 

2026.3.23~

 

*Starched bosom(イカ胸シャツ)

ピンクイカ胸シャツ素材:ピンクスムース

黒イカ胸シャツ素材:黒スムース

 

ピンクのイカ胸シャツはマチュアのお客様からのオーダーです。

黒のイカ胸シャツはプロの先生からのオーダーです。

パーティーシーズンが始まりました。

それに合わせてカラーのイカ胸シャツ(燕尾服の下に着るシャツ)のオーダーが増え、白黒だらけのハセベに彩りを添えてくれています。

 

 

イカ胸シャツといえば、名称の由来となっているイカ部分(胸中心の白い部分)以外は燕尾服から見えることがないので、好きな生地でお仕立てすることが可能です。

※シャツ式、パンツ式、どちらでもオーダー可能です。パンツ式は+5,000円(税別)となります。

 

またこのように、袖なしのイカ胸シャツも弊社にはございます。

袖口部分は燕尾服に取り付けます。

長袖より人気です。

理由としましては

  • タイトな燕尾服でホールド姿勢を取る時、腕にまとう生地がシャツ分減るので、腕にかかる負荷が減り、楽になる
  • 洗濯して乾く速度が速い(海外での遠征でも便利です)
  • 袖口部分は洗わなくて済むので、洗濯による劣化が防ぐことができる
  • 夏場はダントツに涼しい
  • 冬場は汗をかき長袖でそのまま過ごすと、濡れた袖が冷え、体温が奪われる。袖なしならかいた汗を拭き、パーカーなどを羽織っていただくと冷えることなく待機時間を過ごすことが可能です。

 

お手入れの楽さ、機能性、身体への負荷の軽減、これらはダンサーの方々にとっては必須事項だと思い、開発を進めてまいりました。

ぜひご検討ください。

 

 

今週はそんなイカ胸シャツについての覚書を綴ります。

 

 

仕立ての覚書|イカ胸シャツについて

― ピケ生地と正礼装の構造 ―

スターチド・ブザム(Starched Bosom)、直訳すると「糊付けされた胸」。

燕尾服やタキシードの下に着るフォーマルシャツに施される仕様で、胸部分を二重にし、さらに糊付けによって硬さと平面性を持たせた構造を指します。

その起源は、勲章を付けるために胸元を補強したことにあると言われています。
単なる装飾ではなく、「意味」と「機能」から生まれたディテールです。

日本では「イカ胸」と呼ばれており、この呼び名の方が馴染みのある方も多いかもしれません。

 

燕尾服の下に着るシャツには独特の構造があります。

胸元に入る固く整えられた前身頃。

いわゆる「イカ胸」と呼ばれる部分です。

正式にはイカの甲のような形状から、そう呼ばれるようになりました。

この部分には通常のシャツ生地とは異なる素材が使われます

 

ピケ生地とは

イカ胸に使われる代表的な生地がピケ生地「ピケ(Piqué)」です。

表面に細かな凹凸があり、畝(うね)のような立体的な織りが特徴です。

この凹凸によって光を柔らかく受け止め、単調な白ではなく、奥行きのある表情を作ります。

正礼装においては過度な光沢ではなく、控えめで品のある存在感が求められます。

ピケはそのバランスを保つための素材です。

※冒頭のカラーイカ胸シャツは、色付きのピケ素材がないため、別生地でご他応させていただきました。

 

なぜ固く作るのか

イカ胸の部分は通常のシャツのように柔らかくは作りません。

芯地を入れしっかりとした面として構成します。

これは装飾ではなく「面を整える」ための設計です。

燕尾服は前を留めない構造のため、胸元は常に見える部分になります。

そのとき柔らかい布ではなく、整った一枚の面として存在することで全体の印象が引き締まります。

 

線ではなく、面

これまでの覚書では刺繍やモチーフを「線」として扱ってきました。

イカ胸はその対になる「面」の要素です。

縦に流れる線、中心に集まる構造。

そこに対してイカ胸は動かない面として身体の中心に安定を作ります。

動きの中で崩れない面。

それがあることで、燕尾服全体の構造が成立します。

 

仕立ての視点から

ピケ生地は見た目以上に扱いが難しい素材です。

畝の方向、芯地との相性、縫製時の歪み。

わずかなズレでも面としての美しさが損なわれます。

柔らかいシャツとは違い、「形を作る」意識が必要になります。

イカ胸はシャツでありながら、一種の構造体です。

 

まとめ

イカ胸は装飾ではなく、面の設計。

ピケ生地はその面に奥行きを与える素材。

燕尾服という完成された正礼装の中で、シャツは見えない部分ではなく、構造を支える重要な要素です。

動かない面があるからこそ動く衣装が美しく見える。

イカ胸はその静かな役割を担っています。

 

 

以上、今週納品させていただきました衣装のご紹介と仕立てにまつわる覚え書きでした。

今後納品させていただいた衣装を中心に毎週新着ブログを更新していきます。

次週もどうぞご期待くださいませ。

 

2026.3.28